PINNにおけるPDE項別の層別計算分担の解明 — 勾配感度解析と線形プロービングによるアプローチ
前報(第1報)では、CKA相転移解析により「PINNの深い層がPDE制約を学ぶ」というマクロな階層構造を明らかにした。本研究(第2報)では、この知見をPDE項レベルに分解し、各PDE項(対流・圧力・粘性・浮力・連続の式・移流・拡散)がネットワークのどの層で計算されているかを2つの独立した手法で定量的に解明する。
手法Aの勾配感度解析では、各PDE項の二乗平均を擬似損失として各層のパラメータ勾配ノルムを測定し「どの層がどの項を計算しているか」を直接測定した。手法Bの線形プロービングでは、各隠れ層の活性化から各PDE項の空間パターンを線形回帰で予測し「どの層がどの物理情報を符号化しているか」を測定した。
主要な結果
- PDE項ごとに計算を担う層が異なる: 粘性項(Laplacian)は浅い層(L1: 38%)、対流項(非線形積)は中間層(L3-L5)、圧力勾配は出力層(62%)が支配的。PINNは「微分→非線形積→圧力決定」という物理の組み立て順序を自発的に再現している。
- FluidNetが温度場を暗黙的に符号化: FluidNetは温度thetaを出力しないにもかかわらず、全層でbuoyancy(= theta)のR² >= 0.95。結合学習を通じて、ネットワークは他方の物理量を「発見」し記憶している。
- 粘性項は「浅い層で計算されるが非線形に符号化される」: 勾配感度はL1が最大だが、線形プロービングR²はL1で最低(0.26-0.44)。浅い層が高度に非線形な変換でLaplacianを計算していることを示す。
- 階層構造は学習過程で自発的に形成される: 初期状態では勾配分布が一様だが、Picard反復を通じて項別の層分担が鮮明化する。
