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第1章 · Claude入門

Claude 5 世代 — Fable・Opus・Sonnet の新ラインナップ

The Claude 5 Generation: Fable, Opus & Sonnet · 約 15 分

重要キーワード

English日本語説明
Fable フェイブル (寓話) Opus の上位に新設された最上位ティア。最新は Fable 5.1。一般提供のなかで最も賢い
Mythos ミトス (神話) Fable と同一のモデルを、審査を通った組織に提供する版。違いは安全対策と提供範囲
Dual-use デュアルユース 良いことにも悪いことにも使える能力・技術。包丁と刀のたとえ。高度な生物学やサイバーセキュリティが典型例
Project Glasswing プロジェクト・グラスウィング 重要ソフトウェアの脆弱性修正のため、審査を通過した組織に最上位モデルを提供する Anthropic のプログラム
Refusal 拒否応答 安全装置 (分類器) がリクエストを止めたことを示す stop_reason。HTTP 200 のまま返る
Fallbacks フォールバック 拒否されたとき自動で別モデルに乗り換える API パラメータ (ベータ)。野球の代打のイメージ
Effort エフォート 思考の深さとトークン消費を low〜max の 5 段階で制御する output_config のパラメータ

Claude 5 世代の全体像 (The Claude 5 Generation)

2026 年は Claude にとって「世代交代の年」でした。6 月から 9 月までのわずか 4 か月で、主力モデルがほぼ入れ替わっています。

時期 (2026 年) できごと
6 月 9 日 Fable 5 / Mythos 5 登場。Opus の さらに上 の最上位ティアが誕生
6 月 30 日 Sonnet 5 登場。claude.ai の無料・Pro プランと Claude Code の既定モデルに
7 月 24 日 Opus 5 登場。「Fable 5 に近い賢さを半額で」
9 月 1 日 Fable 5.1 / Mythos 5.1 登場。性能アップ + 誤った拒否が大幅に減少
9 月 22 日 Opus 5.5 登場。Opus 5 より 安くて速い

🚃 たとえるなら「電車の種別」 - Haiku = 各駅停車。どこにでも停まる、安くて身近 - Sonnet = 快速。普段の通勤はこれで十分 - Opus = 特急。遠出や大事な用事に - Fable = 新幹線。遠く (最難関の問題) まで一気に行けるが、特急料金も高い - Mythos = 同じ新幹線の車両だけど、許可を得た人だけが乗れる専用便

💡 ch1-l2 で学んだ Opus / Sonnet / Haiku は 詩 のスタイルから取られた名前でした。 新ティアの Fable (寓話) と Mythos (神話) は「物語」の形式。詩から物語へ——スケールの拡大を感じさせる命名です。

Fable とは何か — 「Opus より上」の最上位ティア

Claude Fable は、一般に提供されているモデルの中で最も賢い Claude です。最新版は Fable 5.1 (9 月 1 日)。

Fable 5 → 5.1 で何が変わった?

変化 中身 たとえると
賢さ 低い effort でも Fable 5 と同等以上、高い effort ではさらに向上 同じ燃料でより遠くまで走れる
誤った拒否の減少 サイバー関連の誤検知 約 60% 減、バイオ関連 約 85% 減 空港の保安検査が「普通の荷物」で止めなくなった
実質値下げ 単価は同じだが、キャッシュ読み取りが 1/4 に。一般的な使い方で 約 25% 安く 定期券の割引が大きくなった
セキュリティ用途 脆弱性の 発見 には使えるように (攻撃コードの作成は不可) 「どこに穴があるか」は教えてくれるが「こじ開け方」は教えない

使いどころ

🎯 Fable は「Opus でも足りない最難関」のための切り札 です。 料金は Opus の 2 倍、1 回の返事に数分〜十数分かかることもあります。「最新だから」と常用せず、待つ価値がある仕事 に投入しましょう。 claude.ai では Pro 以上のプランで、使用量クレジット (従量課金) を使って 利用する形です。

Mythos とは何か — Fable との違い

Claude Mythos 5.1 (claude-mythos-5-1) は、Fable 5.1 と同一のモデル です。 知能・料金・API の仕様は同じ。違うのは 安全対策の強さ と 使える人の範囲 です。

Claude Fable 5.1 Claude Mythos 5.1
使える人 誰でも (通常の API / claude.ai) 審査を通った組織だけ
安全対策 危険になりうる領域には 強めの安全装置 利用目的に合わせて調整された安全装置
提供経路 通常の Claude API Project Glasswing や、サイバー / ライフサイエンスの検証プログラム経由

キーワードは「デュアルユース (dual-use)」

デュアルユース とは、良いことにも悪いことにも使える 知識・技術のことです。

🔪 包丁 は料理にも使えるけれど、危険な使い方もできる。だからお店では普通に売っているけれど、刃渡りの長い刀は許可制 ですよね。 高度な 生物学 や サイバーセキュリティ の知識は、まさにこの「刀」にあたります。

📰 実際に起きたこと (2026 年 6〜7 月): Fable 5 の公開直後、安全装置をすり抜ける手法が見つかり、米国政府の輸出管理の対象になったため Anthropic は Fable 5 の提供を一時全面停止 しました。約 3 週間後、すり抜けを 99% 以上防ぐ新しい安全装置を入れて 7 月 1 日に再開 しています。 「能力が高いモデルほど、安全装置と提供の仕方が重要になる」ことを示した出来事です (ch1-l4 の AI Safety の実例)。

Opus 5 / Opus 5.5 — 「半額の Fable」を目指す主力

Opus 5 (7/24) Opus 5.5 (9/22)
ID claude-opus-5 claude-opus-5-5
料金 $5 / $25 $4 / $20 (2 割安い)
位置づけ 「Fable 5 に近い賢さを半額で」 「Fable 5.1 並みの性能」と公式発表。出力も約 30% 速い
考える (thinking) 既定でオン 常にオン (オフにできない)
effort の既定 high medium (1 段低い)

Sonnet 5 — 普段使いの本命

🍱 ch1-l2 の「定食屋の日替わり」が、値段そのままでおかずが一品増えた ような状態です。迷ったら Sonnet、は今も変わりません。

Haiku 4.5 — 速度とコストの最終兵器 (据え置き)

モデル別の特徴 — どれが何向きか

観点 Fable 5.1 Opus 5.5 Opus 5 Sonnet 5 Haiku 4.5
難問の深い推論 ◎ ◎ ○ ○ △
長時間の自律エージェント ◎ ◎ ◎ ○ △
日常コーディングのコスパ △ ○ ○ ◎ ○
応答速度 △ (数分単位も) ○ ○ ○ ◎
コスト効率 △ ○ ○ ◎ ◎

💡 「セキュリティ向きのモデルはどれ?」 — 脆弱性のコードレビューやセキュアコーディング支援といった 日常のセキュリティ実務 は Opus / Sonnet で十分。研究レベルのデュアルユース領域 は、審査を経て Mythos を使うのが正規ルートです。

API から見た Claude 5 世代 — 4.x 世代との違い

第 3〜4 章の予習を兼ねて、開発者向けの代表的な違いを押さえておきましょう。

1. 「考える」がほぼ常時オン、ツマミは effort

❌ 顧客の田中太郎 (090-1234-5678, tanaka@example.com) からこんなクレーム…
✅ 顧客 A からこんなクレーム… (個人情報はマスキング)

2. 安全装置の「拒否」と自動の乗り換え (fallbacks)

危険領域と判定されたリクエストは、HTTP 200 のまま stop_reason: "refusal" で止まります。 正当な作業でも稀に誤判定されるため、拒否されたら自動で別のモデル (Opus など) に乗り換える fallbacks パラメータ (ベータ) を併用するのが推奨パターンです。

🚑 たとえるなら「代打」 — 先発の Fable が「この打席は立てません」と言ったら、ベンチの Opus が自動で代わりに打席に立つ仕組みです。

3. その他の主な違い

項目 Claude 5 世代の仕様
temperature / top_p / top_k 廃止 (指定すると 400。Opus 4.7 以降と同じ流れ)
Assistant プリフィル (回答の書き出しを指定する技) 不可 → 構造化出力 output_config.format を使う
ツールの強制指定 (tool_choice: any / tool) Fable 5.1 / Opus 5.5 では 不可 → auto + 指示で誘導
データ保持 (Fable) 30 日間の保持が必須 (ゼロデータ保持の組織では原則利用不可)
応答時間 難タスクでは 1 リクエスト数分〜十数分 もある (ストリーミング前提の設計を)
プロンプトの流儀 手順を細かく指示するより、ゴールと制約を渡して任せる 方が高品質

⚠️ 「細かすぎる指示は逆効果」になりつつあります。旧世代向けに「まず〜して、次に〜して…」と細かく書き込んだプロンプトは、最新モデルではかえって品質が下がることがあります。 新人には手順書が必要でも、ベテランには「ゴールと守ってほしいこと」だけ伝えた方が良い仕事をする のと同じです。

現行ラインナップまとめ (2026 年 9 月時点)

モデル ID 位置づけ 入力 / 出力 ($ per 1M tok)
Claude Fable 5.1 claude-fable-5-1 一般提供の最高知能 $10 / $50
Claude Mythos 5.1 claude-mythos-5-1 Fable 5.1 と同一モデル・審査済み組織限定 $10 / $50
Claude Opus 5.5 claude-opus-5-5 Opus の最新。安くて速い $4 / $20
Claude Opus 5 claude-opus-5 高性能の主力 $5 / $25
Claude Sonnet 5 claude-sonnet-5 バランス型の本命・既定モデル $2 / $10
Claude Haiku 4.5 claude-haiku-4-5 最速・最安 $1 / $5

⚠️ 料金・提供状況は変動します。最新情報は必ず公式ドキュメント https://platform.claude.com/docs で確認してください。 旧モデルは順次退役しています (Opus 4 / Sonnet 4 は 6 月、Opus 4.1 は 8 月に退役済み)。古いモデル ID を使っているコードは移行計画を。

まとめ

▶ Playground で考察する — 出し分け戦略の意味
あなたは AI ガバナンスの解説者です。「同一の AI モデルを、一般向けには強めの安全装置付きで提供し、審査済みの組織には用途に合わせた安全装置で提供する」という出し分け戦略について、(1) この方式の利点を 3 つ、(2) 運用上の難しさを 2 つ、身近なたとえ話を 1 つ交えながら、初心者にも分かる言葉で説明してください。

演習問題

演習 1: モデル選定コンサルになる

Playground で Claude を「モデル選定コンサルタント」にして、6 つのシナリオに最適なモデルを提案させてください。

観察ポイント: - 「とりあえず最強の Fable」に流れず、コストと難易度のバランスで選べているか - Mythos を一般企業に提案していないか (審査済み組織限定であることを踏まえているか) - 「新しい Opus 5.5 の方が Opus 5 より安い」ことを活かせているか - 自分ならどう選ぶかと比べて、判断基準の違いを言語化してみましょう

スタータープロンプト:
次の 6 つのシナリオそれぞれに最適な Claude モデルを 1 つ選び、理由を 1〜2 文で説明してください。

1. EC サイトのレビュー 10 万件を「肯定/否定/中立」に分類したい
2. 社内チャットボットで日常の問い合わせに答えたい
3. 大規模コードベースのリファクタリング設計を任せたい
4. 未解決の数学的な難問に数時間単位で自律的に取り組ませたい
5. 大学のバイオセキュリティ研究室が、防御研究のために最高性能モデルを深い領域まで使いたい
6. 今 Opus 5 で動いている業務システムのコストを下げたいが、品質は落としたくない
ヒントを見る

シナリオ 5 が引っかけです。「深い領域まで」= Mythos ですが、利用には審査・承認が必要 — その条件に触れられているかがポイント。シナリオ 6 は「新しい方が安い」Opus 5.5 への移行が定石です。

サンプル解答を見る

理想的な回答の骨子:

  1. Haiku 4.5 — 大量分類はコスト最優先。最安モデルで十分
  2. Sonnet 5 (または Haiku 4.5) — 日常問い合わせはバランス型で
  3. Opus 5.5 — アーキテクチャ判断を含む高度な作業。まだ Fable でなくてよい
  4. Fable 5.1 — 長時間の自律的な最高難度推論はまさに最上位ティアの出番
  5. Mythos 5.1 — ただし審査・承認が前提条件
  6. Opus 5.5 — Opus 5 より 2 割安く性能は上。まず評価セットで品質を確認してから切り替える

理解度チェック

  1. Claude Fable 5.1 と Claude Mythos 5.1 の関係として正しいものは?
    1. Mythos 5.1 は Fable 5.1 の軽量版である
    2. 同一のモデルで、安全対策の強さと提供範囲が異なる
    3. Fable 5.1 は API 専用、Mythos 5.1 は claude.ai 専用である
    4. Mythos 5.1 は Fable 5.1 の旧名である
  2. Claude Mythos 5.1 を利用できるのは?
    1. Max プラン加入者なら誰でも
    2. API キーを持つ全開発者
    3. Project Glasswing などの審査を通った組織のみ
    4. 教育機関のみ
  3. 2026 年 9 月時点で、Opus 5 と Opus 5.5 の料金の関係は?
    1. Opus 5.5 の方が高い
    2. 同じ
    3. Opus 5.5 の方が安い ($4/$20 と $5/$25)
    4. Opus 5.5 は無料
  4. Fable 5.1 や Opus 5.5 の API 呼び出しで 400 エラーになる指定は?
    1. max_tokens を 16000 に設定する
    2. thinking={"type": "disabled"} で思考をオフにする
    3. ストリーミングを有効にする
    4. output_config={"effort": "high"} を指定する
  5. Fable が「拒否 (refusal)」したとき、自動で Opus などに乗り換えさせる API の仕組みは?
    1. temperature
    2. fallbacks
    3. prefill
    4. top_k
  6. 「デュアルユース」の説明として最も適切なたとえは?
    1. 2 台のパソコンで同時に使えること
    2. 包丁のように、料理にも危険な使い方にも使えること
    3. 日本語と英語の両方で使えること
    4. 無料版と有料版があること
解答と解説を見る
  1. B — 両者は同一のモデルです。Fable は強めの安全装置付きで誰でも使え、Mythos は審査を通った組織に、用途に合わせた安全装置で提供されます。
  2. C — Mythos は審査・承認された組織だけに提供されます。一般の開発者・企業が使える最上位は Fable 5.1 です。
  3. C — 新しい Opus 5.5 の方が 2 割安く、しかも速くなりました。AI の世界では「新型ほど効率が良くて安い」ことがよくあります。
  4. B — 両モデルは思考が常時オンで、thinking の無効化や budget_tokens 指定は 400 エラーになります。軽くしたいときは effort を下げます。
  5. B — fallbacks (ベータ) を指定すると、拒否されたリクエストを同じ呼び出しの中で別モデルが引き継ぎます。野球の代打のイメージです。
  6. B — 良いことにも悪いことにも使える能力をデュアルユースと呼びます。高度な生物学やサイバーセキュリティが典型例で、最上位モデルではこの領域に安全装置がかかります。