A
AIエージェントの仕組み
ch1-s1 · What is AI

AIとは

約 10 分

この回のゴール

1. AI の定義: ひとことで言うと難しい

「人工知能 (AI)」には、実は 確立された唯一の定義はありません。代表的な立場を並べると:

立場 定義
人間のように考える 人間の思考プロセスを模倣する機械
人間のように行動する Turing テストに合格する機械(見分けがつかない)
合理的に考える 正しい推論を行う機械(論理学)
合理的に行動する 与えられた目標を達成するよう最適に動く機械(エージェント)

👉 現代の AI エージェントは、4 番目の「合理的に行動する」 の系譜です。

参考: Russell & Norvig "Artificial Intelligence: A Modern Approach" の分類

2. 歴史の大きな 2 つの流れ

(a) 記号主義 AI (Symbolic AI / GOFAI)

$$ \text{知識} = {\text{ルール}_1, \text{ルール}_2, \ldots}, \quad \text{結論} = \text{推論}(\text{知識}, \text{事実}) $$

強み: 動作が説明可能、ルールを人が書ける 弱み: ルールに無い状況に弱い、書き切れない

(b) 統計的 AI / 機械学習

$$ f_\theta : X \to Y, \quad \theta^* = \arg\min_\theta \sum_{i} L(f_\theta(x_i), y_i) $$

つまり「入力 $x$ から出力 $y$ を出す関数 $f$ のパラメータ $\theta$ を、損失 $L$ が小さくなるように決める」。

強み: データさえあれば学習できる、未知の状況にも対応しやすい 弱み: 判断根拠が不透明、データに偏りがあると学習も偏る

3. 現代の AI エージェントの位置づけ

       [記号主義]                        [統計的AI]
          │                                  │
          │                                  │
     ルールベース                        機械学習
     エキスパートシステム                      │
                                              ▼
                                           LLM
                                              │
                                              ▼
                                      ツール付きLLM
                                              │
                                              ▼
                                    AIエージェント ← 今ここを目指す

LLM ベースの AI エージェントは、統計的 AI の系譜 です。ただし「ツール呼び出し」「状態管理」の部分には記号主義的な考え方も入っています。

4. このシリーズでの扱い

登場する考え方
01 (本章) 記号主義 vs 統計的の対比
02〜03 統計的 AI (確率分布、ニューラルネット)
04〜06 統計的 AI + 記号主義的な制御構造

まとめ

この回の限界(次への動機)

問題 何が起きるか
ルールベース 書いていない状況にまったく対応できない
最近傍法 過去のデータのコピペしかできない。新しい文を生成することはできない

👉 次回は「生成 AI」。「学習データに無い新しい出力を作る」ためには、単にコピペではなく 確率分布からのサンプリング という考え方が必要になります。

よくある質問

Q. LLM は記号主義じゃないの? 単語で考えてるし... A. LLM は単語を ベクトル として扱い、確率分布 を学習する統計的 AI です。ただし「ツール呼び出し」や「エージェントの制御フロー」には記号主義的な要素が入ります。ハイブリッド化が現代のトレンドです。

Q. 記号主義 AI はもう使われていないの? A. 単体では減りましたが、エキスパートシステム的な要素はビジネスルールエンジンなどで今も現役です。また、LLM + ルール の組み合わせ(ガードレール、コンプライアンスチェック)として復活しています。

参考文献

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