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第6章 · Claude Code応用

デバッグループ実践 (テスト→修正→検証)

Debug Loop Practice · 約 14 分

重要キーワード

English日本語説明
Debug Loop デバッグループ 失敗するテストを書き、修正し、再度実行する反復サイクル
TDD テスト駆動開発 Test-Driven Development。テスト先行のスタイル
Repro 再現 バグを確実に再現させるスクリプトや手順
Bisect 二分探索 git bisect でバグ混入コミットを特定

なぜ Claude Code に「デバッグループ」を任せるのか

Claude Code が一番力を発揮する場面の一つが 「失敗テストを直す」 反復サイクル。 人間がやると退屈な「テスト実行 → ログ読む → コード修正 → 再実行」を、Claude が高速で回します。

典型的な「悪い」依頼

> このバグ直して

→ 何が問題か Claude が推測しなければならず、無駄な探索が増える。

典型的な「良い」依頼

> 次の手順でデバッグしてください:
> 1. tests/test_auth.py::test_oauth_callback を実行 (失敗するはず)
> 2. エラーログを読み、原因を仮説として 3 つ挙げる
> 3. 最も可能性の高い原因に対して修正を試す
> 4. テストを再実行
> 5. まだ失敗するなら次の仮説に進む
> 6. 通ったら全テスト実行で他に影響がないか確認
>
> 上限 5 ループまで。それでも通らなかったら停止して相談。

→ 明示的な 「ループ手順」「停止条件」 がある。Claude は迷わず回せる。

デバッグループ・テンプレート

テンプレ A: 失敗テストを直す

## 状況
テスト `<test_path>::<test_name>` が失敗している。
エラー: <最初の数行を貼り付け>

## ループ
1. テストを実行して失敗を再現
2. エラー箇所のコードを Read
3. 原因の仮説を 3 つ列挙
4. 最有力仮説で修正
5. テスト再実行
6. 失敗なら次の仮説へ (合計 5 試行まで)
7. 通ったら全テスト実行で regression 確認

## 停止条件
- ✅ テストが通る
- ⛔ 5 試行使い切った → 状況報告して相談
- ⛔ 修正案が「コードベースの大幅変更」になる → 相談

テンプレ B: バグ報告から再現

## バグ報告
ユーザーから「ログイン後に画面遷移しない」という報告。
ブラウザコンソールに `TypeError: Cannot read properties of null (reading 'token')` が出る。

## ループ
1. **再現スクリプト** を `scripts/repro_login.py` に作成 (使い捨て)
2. 再現できなかったら何が違うか仮説 → 環境差・データ差を確認
3. 再現できたら、エラー発生地点の特定 (スタックトレース → ファイル)
4. 修正
5. 再現スクリプトで verify
6. 通常テストスイートでも regression なし確認
7. 再現スクリプトを正式テストに昇格 (`tests/test_login_regression.py`)

## 停止条件
- ✅ 再現スクリプトが緑になり、テスト全件緑
- ⛔ 再現できない (環境固有の可能性) → 報告

テンプレ C: パフォーマンス問題

## 状況
エンドポイント `/api/dashboard` が 3 秒以上かかる (目標は 500ms 以下)。

## ループ
1. **計測**: `pytest --benchmark` または apache bench で現状値を取得
2. **プロファイル**: cProfile / py-spy / Chrome DevTools で hotspot を特定
3. **仮説**: top 3 を列挙 (例: N+1, 同期 IO, JSON serialize)
4. **修正**: top 1 を改善
5. **再計測**: 改善幅を確認
6. 目標未達なら次の hotspot へ (3 ループまで)

## 停止条件
- ✅ 500ms 以下達成
- ⛔ 3 ループしても 50% 以上の改善が出ない → アーキテクチャ変更が必要

実践: Claude Code に投げるベストな書き方

❌ 雑な書き方

このテスト落ちてる、直して

✅ 良い書き方

tests/test_payment.py::test_refund が失敗。
エラー: AssertionError: expected 1000, got 980

これをデバッグループで直してください:
- 最初に test を実行して失敗を再現
- 仮説 → 修正 → 再実行 を最大 5 回
- 修正前後で別テストへの影響を確認
- 通ったら git diff を見せて
- 行き詰まったら停止して相談

CLAUDE.md にあるコード規約を守って、過度な変更は避けて。

ループ中の振る舞いを制御する Tips

/cost で出費の上限を見張る

長いループで API 課金が膨らみがち。最大ループ回数を明示 する。

Subagent で並列に試す

「修正案 A と B を並列に試して、どちらが先に通るか見たい」というケース:

> 次を並列に試してください。
> Subagent A (worktree A): 仮説 1 で修正
> Subagent B (worktree B): 仮説 2 で修正
> 両方走らせて、先に通った方を採用。

Plan Mode で計画レビュー

修正範囲が大きそうな時は、最初に Plan Mode で計画を取って、人がレビュー → 実装に移行。

git bisect の活用

「いつから壊れた」がわからない時は:

> git bisect を使ってバグの混入コミットを特定してください。
> good: v1.4.0 (確実に動いていた)
> bad: HEAD (今壊れてる)
> 各コミットで pytest tests/test_xxx.py を実行して判定。

Claude Code が自動で bisect の二分探索を進めます。

ループから抜けられない時のシグナル

以下が出たら 人が介入 すべき:

→ 即 Esc で止めて、状況を整理し、人が判断を入れる。

「自己修復」を引き出すプロンプトの工夫

Claude Code は、テスト失敗のログから自分で軌道修正する能力があります。 それを最大化するプロンプト:

失敗したら:
- ログを丁寧に読む (「ログ全部見て」と促す)
- なぜそのエラーが出たかを 1 文で言語化 (思考を可視化)
- 仮説を 2〜3 個出す (1 つに賭けない)
- 最有力で試す
- それでもダメなら次の仮説

毎ループで状況を 1 行サマリしてください: 「Try N: 仮説 X → 結果 Y」

→ Claude が 思考を出力 するので、人が異常を察知しやすい。

▶ デバッグループ依頼
あなたは Claude Code です。次のバグを上記テンプレートに従ってデバッグしてください (実行できない環境ですが、論理的なループ手順を提示)。 バグ: 「ユーザーが商品を 11 個以上カートに入れると、合計金額が 0 になる」 テスト: tests/test_cart.py::test_large_cart

演習問題

演習 1: 失敗テストをループで直す

あなたのプロジェクトで、わざと壊れたテスト (またはコード) を作って、Claude Code にデバッグループで直させてください。

準備: 1. 動いているテストを 1 つ選び、本体コードに 1 文字バグ を仕込む (例: if x > 0if x >= 0) 2. テスト実行して失敗を確認

Claude Code への依頼 (テンプレート A を使用):

tests/test_xxx.py::test_yyy が失敗。これをデバッグループで直してください。最大 5 試行、状況を毎ループサマリしてください。

観察ポイント: - 何試行で正解にたどり着いたか - 仮説の出し方 (3 つ並べたか、1 つに賭けたか) - テスト側を書き換えようとしなかったか (アンチパターン)

スタータープロンプト:
tests/test_xxx.py::test_yyy が失敗しています。次のループで直してください: 1) 失敗を再現 2) 仮説 3 つ列挙 3) 最有力で修正 4) 再実行 5) 失敗なら次の仮説へ (5 試行まで) 6) 通ったら全テスト regression 確認。毎ループ「Try N: 仮説 X → 結果 Y」で状況サマリ。
ヒントを見る

「テストを書き換えないで」と明示的に書くと、Claude が安易にテスト側を緩めるアンチパターンを防げます。

演習 2: git bisect で混入コミットを特定

あなたのリポジトリで、過去に動いていた機能が今壊れている (or 壊しても良い) ケースを用意し、Claude Code に git bisect させてください。

手順: 1. 動作していた古いタグ・コミットを特定 (例: git tag v1.0) 2. 現在 HEAD で壊れていることを確認 3. Claude Code に依頼: > git bisect でバグ混入コミットを特定してください。good=v1.0, bad=HEAD。各コミットで pytest tests/test_xxx.py を実行して判定。

観察ポイント: - bisect の二分探索を正しく進めているか - 各ステップで build / test を回しているか - 最終的に commit hash を特定できたか

スタータープロンプト:
git bisect でバグ混入コミットを特定してください。good=v1.0, bad=HEAD。各コミットで `pytest tests/test_xxx.py` を実行して通るか判定。最終的に犯人コミットの hash と内容を報告してください。
ヒントを見る

git bisect は build が壊れているコミットでハマることがあります。git bisect skip を Claude Code に教えるとスムーズ。

理解度チェック

  1. デバッグループの良い依頼に **必須** ではないものは?
    1. 失敗するテストの場所
    2. ループの停止条件 (試行数上限など)
    3. Claude のモデル (Opus か Sonnet か)
    4. 毎ループの状況サマリ依頼
  2. Claude が **テストを書き換えて通そうとしている** 兆候を見たら、どうすべき?
    1. そのまま続行 (動けば良い)
    2. Esc で停止し「テストではなく本体コードを直して」と再指示
    3. Opus に切り替える
    4. リポジトリを clone し直す
  3. 「いつから壊れた」がわからないバグの調査に最適なコマンドは?
    1. git diff
    2. git bisect
    3. git stash
    4. git rebase
  4. デバッグループから人が介入すべき **シグナル** として最も重要なのは?
    1. 30 秒経った
    2. 同じファイルを何度も編集している / エラーが毎回違う / 30 分以上ハマっている
    3. Claude が日本語で答えた
    4. git status が clean
  5. 並列に複数仮説を試す時、Claude Code で安全に試す方法は?
    1. main で 1 つずつ試す
    2. isolation: worktree のサブエージェントを並列起動
    3. ブランチを毎回切り直す
    4. git stash を多用
解答と解説を見る
  1. C — モデル選択は依頼の必須要素ではありません (Sonnet で十分)。失敗箇所・停止条件・サマリ依頼が良い依頼の三要素。
  2. B — テスト書き換えは典型的アンチパターン。本体コードに問題がある可能性が高いので、止めて再指示します。
  3. B — git bisect は二分探索でバグ混入コミットを特定する標準ツール。Claude Code に自動化させるとさらに楽。
  4. B — 本質を捉えていない・前の修正が新バグを生んでいる・アーキテクチャ問題、これらは人の判断が必要。
  5. B — isolation: worktree のサブエージェントは並列に隔離環境を作り、互いに干渉せず仮説を試せます (ch6-l7 参照)。