第1章 · Introduction to Claude

Claude を使う前のマナー & 心構え

Etiquette & Mindset for Using Claude
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重要キーワード

PII
個人識別情報
Personally Identifiable Information。氏名・住所・電話番号など個人を特定できる情報
Data Retention
データ保持
サービスがユーザー入力をどれだけの期間保管するか
Training Opt-out
学習除外
自分の入力を AI の訓練データに使わせない選択。claude.ai と API は既定で使用しない
Hallucination
幻覚
もっともらしいが事実ではない情報を AI が生成すること
Projects
プロジェクト
claude.ai で関連する会話と参照ファイルをまとめて保持できる機能
Artifacts
アーティファクト
コードや文書を会話の隣に独立した編集領域として表示する機能
Connectors
コネクタ
Google Drive・GitHub などの外部サービスを Claude から検索可能にする MCP 経由の連携

なぜこのレッスンが必要か

これまでの 4 レッスンで Claude が 何者か / どのモデルがあるか / どこから使うか / 安全性の哲学 を学びました。 ここでは 「実際に触る前に知っておくと事故らない知識」 を 3 つに分けて整理します。

🎯 このレッスンの目的: Claude を使い始めの不安・誤解・トラブルを最小化する。


🔒 1. プライバシー・機密情報の扱い

入力したデータは AI の学習に使われる?

経路 既定の挙動
claude.ai (Free / Pro / Max) 学習には使われない (個人プラン)
Claude API 学習には使われない
Team / Enterprise 学習には使われない
違反検出・モデル安全性向上の例外 利用規約違反が疑われた場合のみ Anthropic 側でレビューされ得る

📌 「学習に使われる」と「ログが保管される」は別問題。 Anthropic は不正利用検知や法的要請のために 30 日程度 入力ログを保管します (詳細は公式 Privacy Policy 参照)。 Zero Data Retention (ZDR) を求める場合は Enterprise 契約が必要。

会社の機密情報を貼っていい?

社内ポリシー次第。一般的なガイドライン:

  • 🟢 OK が多い: 公開情報、自分の作業メモ、技術的な疑問、社外公開予定の文章
  • 🟡 要確認: 社内向け資料、未公開の議事録、コード断片
  • 🔴 NG が多い: 顧客の PII (氏名・電話・住所・カード番号)、医療記録、未公開財務情報、NDA 下の情報

💡 法人利用は Team / Enterprise プランへ。SSO・監査ログ・データガバナンスが整う。 個人の Pro プランで業務機密を扱わない、を原則に。

個人情報の最小化 (PII Minimization)

どうしても顧客情報を AI に処理させたい場合:

❌ 顧客の田中太郎 (090-1234-5678, tanaka@example.com) からこんなクレーム…
✅ 顧客 A からこんなクレーム… (個人情報はマスキング)

本物の名前・電話・メアド・住所をプロンプトに含めない クセを付ける。

▶ プライバシーチェッカーを試す
次の文章に PII (個人識別情報) が含まれているか教え、含まれているなら安全な置き換え案を示してください。「先週、お客様の山田花子様 (yamada@example.co.jp、住所: 東京都新宿区...) からご注文いただいた件について…」

🧠 2. Claude のメンタルモデル — これだけは誤解するな

① Claude は会話をまたいで記憶しない

新規チャット = 記憶ゼロからのスタート。前回の会話の続きを期待してはいけません。

  • claude.ai の Projects 機能 を使うと、関連ファイルや指示を「常に共有する文脈」として登録できる (これが唯一の例外的な永続化)
  • API では 会話履歴を毎回まるごと送信 することで「記憶」を再現する (内部的に毎回再構築している)

② 同じ質問でも答えは毎回変わる

LLM は確率的にトークンを選ぶので、完全な再現性はない。 温度 (temperature) を 0 に近づけると揺れは減りますが、ゼロにはなりません。

「あの時こう言ったじゃん」 は通用しない。重要な回答はその場で保存する習慣を。

③ ハルシネーション — 自信満々に嘘をつく

Claude は 存在しない論文・URL・関数名・人名 を、文体だけ確信ありげに生成することがあります。

特に注意: - 📚 学術論文の引用 (DOI、著者、掲載年) - 🔗 URL (アクセスすると 404) - 💻 マイナーなライブラリの API (引数名・関数名) - 📅 日付・統計数値

必ず一次ソースで検証。Claude に「自信ある?」と聞いても自信を装って答えるので、自分で確認するしかない。

💡 Web 検索トグルを ON にする / Citations 機能を使う / 公式ドキュメントで照合、が三大対策。

④ 文脈が長くなりすぎたら新規チャット

会話が長くなるほど Claude は混乱しやすくなる:

  • 古い指示と新しい指示が衝突する
  • トークン上限に近づくと初期メッセージが圧縮される
  • 過去の自分の発言に引きずられて柔軟性が落ちる

目安: 話題が変わったら 新規チャット。同じプロジェクトの継続なら Projects 機能 に切り替え。

⑤ Claude が苦手なこと

苦手な領域 対処
リアルタイム情報 (今日のニュース、株価) Web 検索ツール / Connectors を有効化
大きな数の計算 コード実行 (Tool Use) に任せる
自社特有のドキュメント Projects / Connectors にファイル添付
画像生成 Claude にはない (Artifacts でコード生成は可)
音声入出力 Voice mode (限定) / 文字起こし経由

🛠️ 3. claude.ai の便利機能 — 知らないと損する 6 つ

① Projects (プロジェクト)

関連する会話・ファイル・指示を 1 つの空間に集約 する機能。 - カスタム指示を毎回書き直さなくてよい - PDF やドキュメントを「常に参照する資料」として登録できる - チームプランなら複数人で共有可

用途例: 「執筆中の本」「特定顧客向け分析」「新製品の開発文脈」

② Artifacts (アーティファクト)

コード・文書・図表を会話の隣に独立した編集領域として表示。 - バージョン履歴つき - HTML / React コンポーネントなら ブラウザ上でプレビュー 可能 - 「ここの色だけ変えて」と再指示すれば差分更新

③ File Upload (ファイルアップロード)

PDF・画像・テキスト・スプレッドシート (CSV/XLSX) を直接添付可能。 ドラッグ&ドロップ で送れる。 - PDF はテキスト抽出 + ページ解析 - 画像はマルチモーダル理解 - 1 メッセージあたりのサイズ制限あり (プラン依存)

④ Web Search (ウェブ検索)

入力欄付近のトグルで ON/OFF。 - ON: 最新情報や URL の中身を検索して回答に反映 - OFF: 訓練済み知識のみで回答 (高速・確定的) - デフォルトは OFF が多いので、最新情報が必要な時は意識的に ON

⑤ Style (スタイル)

返答の口調を Formal / Concise / Explanatory などに切替。 - カスタムスタイルも作成可 - 「常に常体で」「英語で」など、毎回 system に書く手間が減る

⑥ キーボードショートカット (代表的なもの)

  • Ctrl/Cmd + K — 新規チャット
  • Ctrl/Cmd + Shift + L — 直前のメッセージにフォーカス
  • Ctrl/Cmd + / — ショートカット一覧

詳しいショートカットは claude.ai 内の ? ボタンで確認可。


✅ 使い始めのチェックリスト

触る前に自問:

  • [ ] このプロンプトに機密情報・PII が混じっていないか?
  • [ ] AI の出力をそのまま使うか、検証するか、を決めているか?
  • [ ] タスクの重要度に対して、適切なモデル (Opus/Sonnet/Haiku) を選んでいるか?
  • [ ] 長い会話なら Projects に切り替えるべきではないか?
  • [ ] 最新情報が要るなら Web 検索を ON にしたか?

これさえ意識すれば、初心者でも事故りません。

▶ 自分用チェックリストを作る
私はソフトウェアエンジニアとして社内業務に Claude を活用します。私の立場で守るべきプライバシー・セキュリティ・品質チェックのルールを 7 ヶ条にまとめ、各条に「具体的に何をしないか」を 1 行で添えてください。
Hands-on Exercise

演習: ハルシネーション検出演習

Claude に 存在しなさそうな質問 を投げて、ハルシネーション (自信満々の誤情報) が出るかを観察してください。

プロンプト案: 1. 「2019 年に発表された田中健次教授の量子もつれに関する論文の DOI を教えて」(架空) 2. 「Python の __future__.unicode_emoji モジュールの使い方を教えて」(存在しない) 3. 「2025 年の世界人口の正確な値を小数第 2 位まで教えて」(検証不能)

観察ポイント: - もっともらしい数値・名前を返してくるか - 「わかりません」「不確かです」と正直に答えるか - system プロンプトで「不確かな場合は不明と答えて」と書くと改善するか

▶ Playground を開いて実行
Hands-on Exercise

演習: 自分の業務でのプライバシールールを作る

あなたの所属組織・業務に合わせた 「Claude 利用 7 ヶ条」 を Claude 自身に作らせてください。

プロンプト案:

私は [業種・役職] として claude.ai と Claude API を業務利用します。私の立場で守るべきプライバシー・セキュリティ・品質チェックのルールを 7 ヶ条にまとめてください。各条には「やらないこと」を 1 行で添えてください。

観察ポイント: - 業種に応じた具体性が出るか (医療・金融・教育・ソフトウェアで違いが出るはず) - 「PII を貼らない」「公開前にレビュー」など実用的な項目が並ぶか - 自分の組織の既存ポリシーと整合するか

▶ Playground を開いて実行

理解度チェック

7 問のクイズで理解度を確認しましょう。

クイズを開く
🎉

まとめ

お疲れ様でした!