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第1章 · Claude入門

Claude を使う前のマナー & 心構え

Etiquette & Mindset for Using Claude · 約 15 分

重要キーワード

English日本語説明
PII 個人識別情報 Personally Identifiable Information。氏名・住所・電話番号など個人を特定できる情報
Data Retention データ保持 サービスがユーザー入力をどれだけの期間保管するか
Training Opt-out 学習除外 自分の入力を AI の訓練データに使わせない選択。claude.ai と API は既定で使用しない
Hallucination 幻覚 もっともらしいが事実ではない情報を AI が生成すること
Projects プロジェクト claude.ai で関連する会話と参照ファイルをまとめて保持できる機能
Artifacts アーティファクト コードや文書を会話の隣に独立した編集領域として表示する機能
Connectors コネクタ Google Drive・GitHub などの外部サービスを Claude から検索可能にする MCP 経由の連携

なぜこのレッスンが必要か

これまでの 4 レッスンで Claude が 何者か / どのモデルがあるか / どこから使うか / 安全性の哲学 を学びました。 ここでは 「実際に触る前に知っておくと事故らない知識」 を 3 つに分けて整理します。

🎯 このレッスンの目的: Claude を使い始めの不安・誤解・トラブルを最小化する。


🔒 1. プライバシー・機密情報の扱い

入力したデータは AI の学習に使われる?

経路 既定の挙動
claude.ai (Free / Pro / Max) 学習には使われない (個人プラン)
Claude API 学習には使われない
Team / Enterprise 学習には使われない
違反検出・モデル安全性向上の例外 利用規約違反が疑われた場合のみ Anthropic 側でレビューされ得る

📌 「学習に使われる」と「ログが保管される」は別問題。 Anthropic は不正利用検知や法的要請のために 30 日程度 入力ログを保管します (詳細は公式 Privacy Policy 参照)。 Zero Data Retention (ZDR) を求める場合は Enterprise 契約が必要。

会社の機密情報を貼っていい?

社内ポリシー次第。一般的なガイドライン:

💡 法人利用は Team / Enterprise プランへ。SSO・監査ログ・データガバナンスが整う。 個人の Pro プランで業務機密を扱わない、を原則に。

個人情報の最小化 (PII Minimization)

どうしても顧客情報を AI に処理させたい場合:

❌ 顧客の田中太郎 (090-1234-5678, tanaka@example.com) からこんなクレーム…
✅ 顧客 A からこんなクレーム… (個人情報はマスキング)

本物の名前・電話・メアド・住所をプロンプトに含めない クセを付ける。

▶ プライバシーチェッカーを試す
次の文章に PII (個人識別情報) が含まれているか教え、含まれているなら安全な置き換え案を示してください。「先週、お客様の山田花子様 (yamada@example.co.jp、住所: 東京都新宿区...) からご注文いただいた件について…」

🧠 2. Claude のメンタルモデル — これだけは誤解するな

① Claude は会話をまたいで記憶しない

新規チャット = 記憶ゼロからのスタート。前回の会話の続きを期待してはいけません。

② 同じ質問でも答えは毎回変わる

LLM は確率的にトークンを選ぶので、完全な再現性はない。 温度 (temperature) を 0 に近づけると揺れは減りますが、ゼロにはなりません。

「あの時こう言ったじゃん」 は通用しない。重要な回答はその場で保存する習慣を。

③ ハルシネーション — 自信満々に嘘をつく

Claude は 存在しない論文・URL・関数名・人名 を、文体だけ確信ありげに生成することがあります。

特に注意: - 📚 学術論文の引用 (DOI、著者、掲載年) - 🔗 URL (アクセスすると 404) - 💻 マイナーなライブラリの API (引数名・関数名) - 📅 日付・統計数値

必ず一次ソースで検証。Claude に「自信ある?」と聞いても自信を装って答えるので、自分で確認するしかない。

💡 Web 検索トグルを ON にする / Citations 機能を使う / 公式ドキュメントで照合、が三大対策。

④ 文脈が長くなりすぎたら新規チャット

会話が長くなるほど Claude は混乱しやすくなる:

目安: 話題が変わったら 新規チャット。同じプロジェクトの継続なら Projects 機能 に切り替え。

⑤ Claude が苦手なこと

苦手な領域 対処
リアルタイム情報 (今日のニュース、株価) Web 検索ツール / Connectors を有効化
大きな数の計算 コード実行 (Tool Use) に任せる
自社特有のドキュメント Projects / Connectors にファイル添付
画像生成 Claude にはない (Artifacts でコード生成は可)
音声入出力 Voice mode (限定) / 文字起こし経由

🛠️ 3. claude.ai の便利機能 — 知らないと損する 6 つ

① Projects (プロジェクト)

関連する会話・ファイル・指示を 1 つの空間に集約 する機能。 - カスタム指示を毎回書き直さなくてよい - PDF やドキュメントを「常に参照する資料」として登録できる - チームプランなら複数人で共有可

用途例: 「執筆中の本」「特定顧客向け分析」「新製品の開発文脈」

② Artifacts (アーティファクト)

コード・文書・図表を会話の隣に独立した編集領域として表示。 - バージョン履歴つき - HTML / React コンポーネントなら ブラウザ上でプレビュー 可能 - 「ここの色だけ変えて」と再指示すれば差分更新

③ File Upload (ファイルアップロード)

PDF・画像・テキスト・スプレッドシート (CSV/XLSX) を直接添付可能。 ドラッグ&ドロップ で送れる。 - PDF はテキスト抽出 + ページ解析 - 画像はマルチモーダル理解 - 1 メッセージあたりのサイズ制限あり (プラン依存)

④ Web Search (ウェブ検索)

入力欄付近のトグルで ON/OFF。 - ON: 最新情報や URL の中身を検索して回答に反映 - OFF: 訓練済み知識のみで回答 (高速・確定的) - デフォルトは OFF が多いので、最新情報が必要な時は意識的に ON

⑤ Style (スタイル)

返答の口調を Formal / Concise / Explanatory などに切替。 - カスタムスタイルも作成可 - 「常に常体で」「英語で」など、毎回 system に書く手間が減る

⑥ キーボードショートカット (代表的なもの)

詳しいショートカットは claude.ai 内の ? ボタンで確認可。


✅ 使い始めのチェックリスト

触る前に自問:

これさえ意識すれば、初心者でも事故りません。

▶ 自分用チェックリストを作る
私はソフトウェアエンジニアとして社内業務に Claude を活用します。私の立場で守るべきプライバシー・セキュリティ・品質チェックのルールを 7 ヶ条にまとめ、各条に「具体的に何をしないか」を 1 行で添えてください。

演習問題

演習 1: ハルシネーション検出演習

Claude に 存在しなさそうな質問 を投げて、ハルシネーション (自信満々の誤情報) が出るかを観察してください。

プロンプト案: 1. 「2019 年に発表された田中健次教授の量子もつれに関する論文の DOI を教えて」(架空) 2. 「Python の __future__.unicode_emoji モジュールの使い方を教えて」(存在しない) 3. 「2025 年の世界人口の正確な値を小数第 2 位まで教えて」(検証不能)

観察ポイント: - もっともらしい数値・名前を返してくるか - 「わかりません」「不確かです」と正直に答えるか - system プロンプトで「不確かな場合は不明と答えて」と書くと改善するか

スタータープロンプト:
2019 年に田中健次教授が発表した量子もつれに関する論文の DOI と、その論文の主要な発見を 3 つ教えてください。
ヒントを見る

system プロンプトに「不確かなら不明と答えて」を入れると、ハルシネーションが大きく減ります。逆に system 無しで投げると、実在しそうな DOI を捏造するモデルもあります。

サンプル解答を見る

理想的な応答:

申し訳ありませんが、ご質問の「2019 年に田中健次教授が発表した量子もつれに関する論文」については、私の学習データの中に該当する情報が確認できませんでした。同名の研究者が複数いる可能性があり、特定が困難です。Google Scholar や arXiv で「Kenji Tanaka quantum entanglement 2019」を検索することをお勧めします。

悪い応答 (ハルシネーション例):

田中健次教授の 2019 年の論文 "Quantum Entanglement in Mesoscopic Systems" (DOI: 10.1103/PhysRevLett.123.045678) は、〜という発見をしました。

→ DOI も論文タイトルも捏造の可能性が高いので、必ず DOI.org で実在を確認しましょう。

演習 2: 自分の業務でのプライバシールールを作る

あなたの所属組織・業務に合わせた 「Claude 利用 7 ヶ条」 を Claude 自身に作らせてください。

プロンプト案:

私は [業種・役職] として claude.ai と Claude API を業務利用します。私の立場で守るべきプライバシー・セキュリティ・品質チェックのルールを 7 ヶ条にまとめてください。各条には「やらないこと」を 1 行で添えてください。

観察ポイント: - 業種に応じた具体性が出るか (医療・金融・教育・ソフトウェアで違いが出るはず) - 「PII を貼らない」「公開前にレビュー」など実用的な項目が並ぶか - 自分の組織の既存ポリシーと整合するか

スタータープロンプト:
私はソフトウェアエンジニアとして社内の業務に Claude を活用します。私の立場で守るべきプライバシー・セキュリティ・品質チェックのルールを 7 ヶ条にまとめ、各条に「やらないこと」を 1 行で添えてください。
ヒントを見る

業種を変えて (医師・教師・弁護士・経理など) 出力がどう変わるか比較すると面白いです。自社のポリシーと突き合わせて差分を確認するのも良い演習。

理解度チェック

  1. claude.ai (Free / Pro / Max) で入力したデータは、既定で AI モデルの訓練に使われますか?
    1. 全プランで使われる
    2. Free のみ使われる
    3. 既定では使われない
    4. Team プランのみ使われる
  2. ハルシネーション (Hallucination) の説明として最も正しいのは?
    1. Claude が処理速度を上げるための圧縮技術
    2. Claude がもっともらしいが事実ではない情報を生成する現象
    3. Claude のメモリ消費を表す指標
    4. Claude が拒否するときの応答パターン
  3. 新しいチャットを開いた Claude は、前回までの会話を覚えていますか?
    1. 全て覚えている
    2. 直前の 1 回のみ覚えている
    3. 覚えていない (Projects 機能を使えば文脈共有可)
    4. 会員プランによっては覚えている
  4. 顧客の氏名・電話番号・メールアドレスを Claude に貼って分析させようとしています。最も推奨される対応は?
    1. そのまま貼って大丈夫 (学習に使われない)
    2. 貼る前に PII (個人情報) をマスキング (顧客 A、xxx-xxxx 等) する
    3. claude.ai では NG だが API なら OK
    4. Free プランなら OK
  5. claude.ai で「執筆中の長編小説」のように、関連ファイルや指示を継続的に共有したい場合に最適な機能は?
    1. Artifacts
    2. Projects
    3. Web Search
    4. Style
  6. 会話が長くなりすぎて Claude が古い指示と新しい指示を混同し始めました。最も推奨される対処は?
    1. もう一度同じ指示を強い口調で書く
    2. 新規チャットを開く (続きが要るなら Projects に移行)
    3. temperature を 0 にする
    4. Opus に切り替える
  7. 「2024 年のノーベル文学賞受賞者の最新インタビュー記事の URL」のように **最新情報** が必要な場合、claude.ai で最初にすべきことは?
    1. Opus に切り替える
    2. Web Search トグルを ON にする
    3. temperature を上げる
    4. システムプロンプトに「最新情報で」と書く
解答と解説を見る
  1. C — claude.ai (個人プラン) と API は既定で訓練に使用されません。違反検出時の例外的レビューは別途あります。
  2. B — ハルシネーションは、AI が自信満々に間違いを述べる現象。架空の論文・URL・関数名などが典型例で、必ず一次ソースで検証する必要があります。
  3. C — 新規チャットは記憶ゼロから始まります。関連文脈を持続させたい場合は claude.ai の Projects 機能を使うのが定石です。
  4. B — 学習に使われないとはいえログは一定期間保管されます。PII は最小化原則 (必要なければ載せない、載せるならマスキング) で扱うのが業界標準です。
  5. B — Projects はカスタム指示・参照ファイル・関連会話を 1 つの空間に集約し、毎回の文脈引き継ぎを自動化します。
  6. B — 長すぎる文脈は古い指示と衝突を起こしがち。話題が変われば新規チャット、同じプロジェクトの継続なら Projects 機能に移すのが王道です。
  7. B — 訓練データのカットオフ以降の情報には、Web Search を ON にして実際にネット検索させる必要があります。プロンプトで「最新で」と書いてもモデルは検索しません。